設計者:ICADA
この住宅は、若いご夫婦とお子さま二人が暮らすための住まいです。
敷地は、路地が屈折する複雑な旗竿形状で、計画にあたっては地盤改良や浄化槽の設置も必要となる条件の厳しい土地でした。さらに、設計を開始した2022年は、コロナ禍やウクライナ情勢の影響による木材価格の高騰、いわゆるウッドショックの渦中にあり、通常通りの材料手配では予算内で建築を成立させることが難しい状況でした。私たちは、こうした条件に向き合うなかで、設計や施工の工夫だけでなく、材料調達の考え方そのものから住まいづくりを組み立てる必要があると考えました。
そこで着目したのが「大径木」の活用です。現在、丸太は細いものより大きいものの方が単価が低くなることも多く、長い年月をかけて育てられた木が十分に価値づけられないまま、細かく製材されて使われていく現実があります。そうした状況に対して、施工者としても、木の持つ本来の大きさや表情をできる限り素直に生かしながら、コストと魅力を両立する方法を形にできないかと考えました。
直径50〜60cmほどのスギ丸太を、「だら挽き」と呼ばれるシンプルな製材方法で短冊状に挽き、幅広の板材として活用しています。この挽板を連続して並べることで、仕上げ材としての力強い表情を引き出し、いわばコンクリート打ち放しに対する「スギ板挽き放し」ともいえる空間をつくりました。木そのものの質感や個体差がそのまま仕上がりの表情となり、この住まいならではの素材感を生み出しています。
さらに、製材の過程で出る挽板の端材についても、階段や家具などの部材としてできる限り使い切ることで、材料を無駄なく生かしました。限られた予算の中でコストを調整するだけでなく、一本の木をできるだけ余すことなく使い切ることも、この家づくりにおける大切なテーマのひとつでした。
厳しい条件を解決しながら建てるだけでなく、調達から加工、仕上げに至るまで木の価値を見直し、その魅力を暮らしの中に丁寧に落とし込んだ住宅として実現しました。








